ドラッカー経営学とランチェスター法則応用の
「イノベーションとランチェスター」勉強会

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その2日目、いよいよ本題のドラッカー先生
・著書「イノベーションと企業家精神」に。

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まず「イノベーションのための7つの機会」
を再確認していきます。


「7つの機会」

1.予期せぬ成功と失敗を利用する

2.ギャップを探す(調和せざるもの)

3.ニーズを見つける

4.産業構造の変化を知る

5.人口構造の変化に着目する

6.認識の変化を捉える

7.新しい知識を活用する

(補)アイデアによるイノベーション


これらをドラッカー先生は、信頼性と
確実性の大きい順に列挙されています。
ですから、計らずとも出来るだけ「1」の
「予期せぬ成功と失敗」に目を向ける
べきだろうことは一目瞭然。

その上で、最後に補足的として
「アイデアによるイノベーション」
それを追求すべきではないが、
その存在自体は無視すべきではない
的な意味合いで紹介しています。

ほとんど無視して良い内容でしょうか。

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しかし参加者からは、その中でも
【騎士道精神】との言葉を中心に
何か気高い意味合いを見出してか、
変にこだわっているようなご様子。

その部分、初版(1985年5月出版)
イノベーションと企業家精神
 実践と原理」では、


【訳】しかし我々は、「アイデア」に基づく
   イノベーションのもつ【騎士道精神】
   を軽視してはならない。


それが、2007年3月出版の
イノベーションと企業家精神
  (ドラッカー名著集)」では、


【訳】その騎士道精神(←この項目名を追加)

   とはいえ、一国の経済が企業家的で
   あろうとするならば、アイデアによる
   イノベーションに特有の【騎士道精神】
   をないがしろにしてはならない。


確かに、ここの訳だけを読めば、
どちらもイノベーションには
【騎士道精神】が備わっており、
無視するわけにはいかない文面です。

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その部分、原書では、


【原文】And yet an entrepreneurial economy
       cannot dismiss cavalierly
      the innovation based on a bright idea.


「パッ!と見」の限りでは、どこにも
【騎士】も【騎士道】も【騎士道精神】
も無いような気がします。

本来的にこの意味合いは、その後に
続く文章からも、十分に読み解けるはず
ですが、少し気になりした。

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ちょうど、海外の方から別件で
ご連絡をいただいておりました。
その方は以前に勉強会へご参加の際に
ドラッカー先生にも精通されていた
ことを存じていましたので、
「折角ですから」とお尋ねしました。
(お忙しいところ失礼しました)

すると、実に分かりやすい解説を頂きました。
以下、少し長文となりますが、
その解説の一部をご紹介いたします。


ご質問いただきましたドラッカー先生の文章に
関して、まず直訳に近い翻訳を致します。


【直訳】したがって今では、企業家的経済は、
    明るいアイデアに基づいた革新を
     無頓着に退けることはできない。




◆問題◆

 ★cavalier = without caring about other people
      or about a dangerous or serious situation
           (ケンブリッジ英英和辞典より)

   これは、騎士道から派生したと言われている
   【ノーブレス・オブリージュ(noblesse oblige)
   (仏語:ノブレス・オブリージュ noblesse oblige)      

  *検索すると↓こんなの出ました?

noblesse oblige













   とは真逆の意味として、イギリス人は
   この【cavalier(読みはカバリエ?)】
   を使っているようです。
   むしろ、ガサツなイメージです。
   少なくともジェントルマン(紳士)
   のイメージとは真逆です。


 以上を前提で、先の翻訳をもっと普通のイギリス人が
 理解する内容にすると、以下のようになります。
 (注釈:ドラッカー先生はイギリス人では無い


【意訳】したがって今では、企業家における経済は、
     明るいアイデアに基づいた革新を
     分別なく退けることはできない。


【追意】企業家が企業家たらんと欲するなら
     その経済社会で、光り輝くアイデアである
     イノベーションのアイデアと実践を
     はなから切り捨てないで、
     いったん取り入れて、取捨選択せよ。


少し私なりの解釈を加えると以上でしょうか。
なお、この文章と【騎士道】との関係は分かりません。


実に分かりやすい解説です。
ご遠方から有り難うございました。

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先の後記でも触れていましたが、
著書「イノベーションと企業家精神」
を一時的にでも読み過ぎてしまうと
「ドラッカー教」となってしまう
恐れがあるのかもしれません。

そうなれば、本来はイノベーションを
生み出すために読む本であるはずが、
逆にイノベーションの足かせになりうる
・・・ご注意が必要です。

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もっとも、今回の場合は、故意か不意か
【騎士道精神】と訳してしまった人にも
罪があるのかも知れません。
(これこそ【超訳】かも?)

ともなく、原書が読めるに越したことはない、
そう痛感しました〜残念。