*昨年のこの頃に、途中まで書いていた
  ブログです。

昨今、社長から上司・部下まで社内全体で
意思疎通が図られ、価値観から使命感、
経営理念から目的・目標、経営戦略までも、
社員全員に共有されており、社員に優しい
会社として日本で一番大切にしたいとかで、
取り上げられることも少なくありません。

あたかもブームが如く・・・

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ところで「孫子の兵法 九地篇」では、
「部下のやる気と集団の力を引き出せ」
として書かれている内容があります。

その一部を、下記に抜粋すると、
(原文、書き下し文、解説とそれぞれ)


[原文]

将軍之事、静以幽、正以治。

能愚士卒之耳目、使之無知。

易其事、革其謀、使人無識。

其居、迂其途、使人不得慮。

帥與之期、如登高而去其梯。

帥與之深、入諸侯之地、而發其機、焚舟破釜、

若驅群羊、驅而往、驅而來、莫知所之。

聚三軍之衆、投之於險、此將軍之事也。

九地之變、屈伸之利、人情之理、不可不察也。



[書き下し文]

軍に将たることは静もって幽、正もって治。

よく士卒の耳目を愚にして、
これをして知ることなからしめ。

その事を易(か)え、その謀を革(あらた)めて、
人をして識(し)ることなからしめ。

その居を易え、その途を迂(う)にして、
人をして慮(おもんばか)ることを得ざらしむ。

帥(ひき)いてこれと期すれぱ、
高きに登りてその梯(てい)を去るがごとし。

帥いてこれと深く諸侯の地に入りて、
その機を発するや、舟を焚き釜を破りて、
群羊を駆(か)るがごとし。

駆られて往き、駆られて来たるも、
之(ゆ)くところを知ることなし。

三軍の衆を聚(あつ)めて、これを険に投ずは、
これ軍に将たるのこと謂(い)うなり。

九地の変、屈伸の利、人情の理、察せざるべからず。



[解説(現代語訳)]

軍を統率する際には、あくまでも
冷静で厳正な態度で臨まなければなりません。
兵士には作戦計画の全てを知らせる
必要はないのです。

戦略戦術の変更についてはもちろん、
軍の移動、迂回路の選択などについても
同じく兵士に知られてはならない。

いったん任務を与えたら、
2階にあげてハシゴを外してしまうように
退路を断ってしまうことです。
敵の領内深く進めば放たれた矢のように進み、
舟を焼き、釜を壊して、兵士に生還を諦めさせ、
羊を追わせるように存分に動かす、しかも
兵士には何も知らせない。

このように全軍を窮地へ追い込むことが
将帥の務めである。

したがって将帥は、
地形の区別、進軍の判断、心の洞察について、
よくよく通じていなければならない。


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少し前にご紹介したように、竹田先生
ランチェスター経営(株)かつての教材
ランチェスター・中小企業の成功戦略
 /第1部 経営の基本戦略」CD
現行の「戦略☆名人」の旧版)

その中で、孫子を経営に置き換える
難しさに触れていました。

確かに、先の孫子の一節を、以前に
(株)ハードリング軍師・岡漱一郎様
からお聞きしたときは「?」でした。

しかし今、起業家となってみて、
このことは痛感しております。
たとえ、社員を1人も雇っていなくとも。

やはり、業績の98%は社長ひとりの実力です。

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最初に紹介した、会社組織に
属したことがないような見識者が説く
「大切にしたい会社」と、実際に
「生き残っている会社」との違いが、
この辺りにも見え隠れしてそうです。

私には前者が「PDCAサイクル」と同様、
それを売り物にする側から見たご都合主義
にしか思えないのですが、いかがでしょう。

pdca

★ご参考までに/市場の向こうをみる「静以幽」
  大和証券グループ本社 CEO 日比野隆司 氏